<こんな病気>
急性胃腸炎は、しばしばいろいろな病名で呼ばれます。
例えば乳児では「乳児下痢症」・「急性消化不良症」・「感冒性消化不良症」、
幼児・児童なら「急性胃腸炎」・「感冒性胃腸炎」といった具合です。
… 戦前、日本ではドイツ医学が主流でしたが、戦後、アメリカ医学に代わり、
病名の多くもアメリカ的に変わりました。
そんな中、なぜか子どもの胃腸炎の分野では、昔のドイツ医学用語が一部残り、
新・旧両名が使われている事が関係していると言われています。
(ちなみに「消化不良症」とはドイツ的、 「下痢症」とはアメリカ的表現です。)
急性胃腸炎は、感染する病原体の種類によって、大きく2つに分かれます。
- 細菌性腸炎 … 「赤痢」・「コレラ」・「腸チフス」・「サルモネラ腸炎」
・「0-157出血性大腸炎」など。
- ウィルス性腸炎では「ロタウィルス下痢症」・「アデノウィルス下痢症」など。
急性胃腸炎の病名はいろいろですが、病態:「嘔吐」・「下痢」・「食欲不振」
・「腹痛」といった一般的症状は、おおよそ共通しています。
ただ、疾患によっては、症状が特異であったり、特別な「続発症」や「合併症」を
伴う事があります。
<症状>
『ロタウイルス』
- 乳幼児に多く、潜伏期間は1〜3日。症状は5〜8日間続きます。
- 極めて強い嘔吐、下痢(頻回の水様便)が特徴で、30〜40%には、発熱も
みられます。別名を「乳児冬期下痢症」とも言います。
- 冬場に多く、ときに脱水が進行し重症化するので、注意が必要です。
- 2次的乳糖不耐症(ミルクの主成分の乳糖が消化できず長びく)になる事が
ありますが、その場合、便の検査で約15分で判定ができます。
『カリシウイルス』
- 学童・成人に多く、潜伏期間は1〜2日。症状は1〜2日続きます。
- 嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、食欲不振が特徴で、ロタウイルスより軽くすむ
事が多いようです。別名を「流行性嘔吐(下痢)症」と言います。
- 冬の、ロタウイルスよりやや早い時期に流行しますが、年間を通して
みられます。
『アデノウイルス』
- 乳幼児に多く、潜伏期間は1〜2日。症状は9日程続きます。
- 下痢、嘔吐、発熱が特徴で、年間を通して見られます。
… 急性ウィルス性胃腸炎と似た症状を持つものとして、第一に食中毒(含:軽い食中り)
が挙げられます。
食中毒は、通常、原因食物を食べてから2〜3時間で起こりますが、当然これより
遅いことも、早いこともあります。
発生は、まず悪心が起こり、次に嘔吐と腹部痙攣が起こります。下痢が起こる事も
あります。その他の症状としては、発熱と寒け、脱力感と頭痛が挙げられます。
「同じものを食べた人全員が気分が悪くなる」のが特徴。
<治療>
薬も使いますが、家庭での食事療法が一番大切です。
吐き続けるときや、脱水が強いときには、点滴や入院が必要になる事もあります。
- 吐いたら食べない・飲まない
… 吐き気が強い時は、しばらくお腹を休める事が大切です。
- まずは水分から
… 吐き気が落ち着いたら、薄目の水分を少しずつから始めましょう。
- 吐き気がなくなったら
… 消化の良いものを、少しずつから始めましょう。
牛乳・ミルクなどの乳製品は、この場合、適していません。
- お風呂
… 熱が高かったり、ぐったりしていなければ(軽くなら)構いません。
お尻を清潔に保ち、湯冷めをしないように気を付けましょう。
<次に受診するまでに>
… 飲んだ水分の量、嘔吐や下痢の回数、様子などを、メモして持参しましょう。
- 「下痢」は、消化管に悪い病原体が入ったり、悪い食べ物・毒物が入った時、
あるいは食べ過ぎたりした時に、それを速く消化管から排除するために起こる
体の反応ととることができます。
- 「嘔吐」は、悪い病原体や過剰な食べ物、毒物などを速く排除するために起こる
体の反応ととることができます。
- 「腹痛」は、病気の部位がどこであるかを知らせてくれます。
- 「食欲不振」は、食事を与えてはいけないという警報であって「胃腸をしばらく
休ませて」という体からのサインとうけとれます。
- 「口渇」は、水分を与えよという体からのサインとうけとれます。
<こんな時は、再度受診を!>
脱水症状を起こしたり、他の病気である疑いもあります。
↓↓↓こんな時は、早めに受診を。
- 吐き気が一向におさまらないとき。
- グッタリして元気がなく、顔色が悪いとき。
- 唇が乾いて、オシッコが出ないとき。
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